HRが終わると、楓と心音に挨拶をして教室を出た。
自転車で来たから、裏門へ回る。
「ふぅ」
今日は埋もれていなかったから、安心して自転車を引っ張りだす。
いすに座ると、スマホを取り出して画面をタッチして耳に当てた。
「もしもし」
電話越しは、実際に聞くよりも低い、けれど優しい声に心がおどる。
「凛ちゃん! 電話なら平気かなと思って。 今大丈夫?」
「うん、大丈夫。 もう家?」
「まさか! さっきHR終わったのに」
「ん? ……あ、そっか。 まだ16時過ぎたばっかりだな」
数学準備室の時計を見たのか、照れくさそうに笑う凛ちゃん。
電話してもいいなら、数学準備室に押しかけちゃえばよかった。 そこは凛ちゃん以外の先生あんまり来ないし。
「……なんかもっと、堂々と会いたいなぁ」
つい、本音がもれてしまった。
学校内では親しくしてはいけないし、学校外でも気をつけないといけない。
そんなことは、わかってるんだけど。
「……うん、俺も。 ひまを抱きしめて寝たい。 疲れた、癒しがほしい」