確かにその日、あたしは数学準備室の前にいて、ふたりの会話を聞いてたけど……。
凛ちゃんに呼ばれたから仕方ないというか……と、心の中で言い訳をする。
「邪魔者は潔く去るわよ。 まあ頑張ってね。 吉川さん」
「は、はい……!」
そう返事をしたとき、クラスの女の子が「お待たせー!」と戻ってきた。
うしろからついてきた人物を見て、みんなざわついた。
「九条先生、これで写真お願いします!」
女の子からスマホ受け取って、少し離れた場所に立つ凛ちゃん。
付き合っていなくたって、学校に行けば凛ちゃんがいる。 すごいことだな。
「撮りまーす! はい、笑ってー」
スマホの向こうに凛ちゃんがいる。 変に緊張して、上手く笑えなかったと思う。
女の子が凛ちゃんに近寄って、写真を確認する。 ばっちり撮れていたようで、凛ちゃんはお礼に対してほほ笑み、去っていった。
「九条先生ほんとかっこいいよね〜」
「付き合うならああいう大人で優しい人がいいなぁ」
写真を撮り終え、各自席に戻る中、そんな会話を耳にした。