人を操るのが、上手だ。
こういうシチュエーションのときはこうやればいい。こういう時はああすればいい。
それをよくわかっている。
人を騙すのが得意、そういうわけではなくて、
人の不快な気持ちを取り除くのが得意なんだ。
だから、普通なら絶対にバレない、人が騙されてしまう作り笑顔を、いとも簡単に作ってしまう。
本心は厚い幕をして、決して私たちには見せてくれない。
そんな、“上手”な人。
「どうかしました?」
「春川くんは、いい人なんだね」
「……え?」
「今、こうやって私に聞いてるのは、全部琉生くんのためなんでしょ?」
だからわざわざ、私の独り言の裏を聞いている。



