本も返したことだし、帰ろうかな。
カバンを持って、私は生徒玄関に行った。
靴を履き替えて、校舎を出ようとしたとき。
「あ」
私しかいないと思っていた静かな生徒玄関に、そんな声が響いた。
反射的に振り返ると、そこには会いたかった人がいた。
「琉生くん!!」
琉生くんの姿を見ただけで、胸が高鳴った。
琉生くんに会いたいと思ったら、会えちゃった!
神様が導いてくれた、乙女みたいにそんなこと思っちゃいそう。
私は琉生くんに駆け寄って、「今帰り?」と無難な質問をする。
放課後に琉生くんと会うなんて、初めてだ。



