ふと頭に浮かんだのは、琉生くんの姿。
恋愛物語の本を読んだからかな。
どうしようもなく、会いたくなった。
私はパタン…とその本を閉じて、静かに本棚へ戻した。
一瞬、借りようか迷ったけど、今日はやめておいた。
気分的に、ね。
現在進行形で、お世辞にもうまくいっているとは言えない切ない恋をしているのに、
こんな切ない物語のこの本を読んだら、「好き」と伝えることに臆病になっちゃうかもしれないから。
私は幸せなのに、
恋そのものは切ない。
小さな矛盾が、私の心を支配していった。
私はそれに気づかぬ振りをして、その場をあとにした。
今度、桃葉におすすめしてみよう。
桃葉、こういう本好きそうだから。



