俺はその視線が鬱陶しくて、早足で歩くのを再開した。
「ちょ、速すぎ」と、後ろからのんびりと歩いている志恩の声が聞こえる。
――あれ?と思った。
俺、いつの間に、北村先輩の声覚えてたんだろうって。
毎日声聞いてるんだから、覚えるだろ。
でも、そこまではっきりとわかるか?
自分の中で、自問自答。
悶々と繰り返される、答えなど出ない疑問。
そして、考えるのをやめた。
いつまで経っても答えが出ないのなら、考えても無駄だ。
――キーンコーンカーンコーン
「志恩!」
「わーってる」
チャイムが鳴って、俺らは廊下を走って家庭科室へ急いだ。



