「別に何もないじゃんか」 「そう?」 こんなにもわかりやすく広がってるのに。 青々とした空の、澄んだ表情が見えてくる。 桃葉からしたら面白くないことでも、私からしたら……。 「ていうかさ、お昼食べようよ」 桃葉は持っていた、昼食と思われるパンを私に見せる。 私は「そうだね」と頷いて、窓際から離れた。 北村 衣緒【キタムラ イオ】。 高校二年生。 特に自慢できるような特技もないし、趣味もない。 つまらない人間かもしれないな、私は。 だけど、ひとつだけ。 胸を張って言えることがある。