さっきよりも小さな声で、先輩が突然呟くように言った。
「いいですよ、別に。体調崩したなら仕方ありませんって」
「……」
俺はわざと明るめにそう言ったが、先輩は黙り込んでしまった。
長い沈黙が、俺と先輩の間に流れる。
言葉が見つからない。
なんて声をかけたらいいんだ……?
先輩は俺に背を向けて、屋上から見える風景を眺めている。
今先輩は、どんな表情をしているのだろう。
「琉生くん」
沈黙を破ったのは、先輩の方だった。
先輩は俺の方を向き、目を細める。
吹いている優しい風には、温もりなんてなかった。



