『琉生くん、――』
先輩の姿が消えるその瞬間、彼女は声にならなかったメッセージを俺に送った。
先輩の口の動きでなんとなく言葉はわかったけど、俺は受け止められなかった。
『先輩っ!』
嫌だ。“バイバイ”なんて、言うなよ……っ。
心臓が、苦しい。
なんだよ、これ。
夢なのに、どうしてこんなにも泣きたい気持ちになるんだ。
これは悪い夢。
そうだ。ただそれだけのことだ。
……なのに。
俺の胸の底には、はっきりとした悲しみと儚さが残っている。
涙で濡れた先輩の悲しげな表情と
変わりゆく空の儚い姿。
それらが脳裏を過ぎったその時、真っ白な世界は黒く塗りつぶされ、夢が終わった。



