『あ、あの……』 俺が恐る恐る声をかけると、その人はゆっくりと振り返った。 『え……』 『る、いくん?』 泣いていた人は、北村衣緒先輩だった。 先輩は涙のような水色のワンピースを着ていて、涙で濡れた頬を拭って、俺を見つめた。 『どうして泣いてるんですか?』 俺は先輩と同じ目線になるようにしゃがんで、先輩の目尻に溜まっている大粒の涙をすくい取る。 先輩の瞳は涙で潤んでいて、揺れている。 なんだか幼く感じるな、夢の中の先輩は。 俺が年上になった気分だ。 『……怖いの』 『怖い?』