「ねぇ、私が前言ったこと覚えてる?」
俺が便箋を封筒に戻したとき、突然金井さんがそう言った。
体育祭の時、言われたことだろうか。
『衣緒を傷つけないで』
『え?』
『泣かせるようなこと、しないでよね』
「覚えてます」
俺は頷きながら答える。
「多分今衣緒は、泣きたいと思う。次あなたに会うときだって、泣きたいと思う」
……え?
どういう意味だ?
「でも衣緒は強がって笑うと思うの。笑顔で『大丈夫』って言って。……全然大丈夫じゃないくせに」
……そうだ。先輩が『大丈夫』って言うときはいつだって、大丈夫じゃないときだ。