時刻は既に、10時を回っていた。 10時15分。 もう15分も経っている。 先輩が遅刻? 寝坊でもしたのか? でも先輩は、勉強会の時も祭りの時も、遅刻はしてなかったし、逆に早く着いていた。 たまたま寝過ごした、とか? ……なんだろう、このざわめきは。 気持ち悪いくらい、胸の奥がもどかしい。 不安で押しつぶされそうだ。 「――静野琉生」 不意に名前を呼ばれ、俺はバッと俯いていた顔を上げる。 そこにいたのは、先輩ではなかった。