もう午後3時頃。
もうすぐ文化祭が終わってしまう時間に、俺は衣緒さんを連れて屋上にやってきた。
中庭には上から見ると文字に見える美術部が作ったアートがあり、衣緒さんは屋上からそれを見て、興奮していた。
「衣緒さん」
「なに?春川くん」
俺が衣緒さんの名前を呼ぶと、優しく問いかけながら顔だけ振り返る衣緒さん。
青い空を背景にした衣緒さんは、輝いていた。
眩しいくらい、綺麗に見えた。
「今日は俺のわがままに付き合ってくれて、ありがとうございました」
「ううん、こちらこそ。すっごく楽しかった」
ふわりと花のように微笑む衣緒さん。
この笑顔は、琉生じゃなく俺に向けられたもの。



