「じゃ、俺は衣緒さんとデートしてきまーす」
「とっとと行け、アホ」
相変わらずの悪口。
でも今日の俺は、そんな琉生の言葉に構ってあげれないんだよなー。
今の俺の頭の中は、衣緒さんのことでいっぱいだからな。
俺はめちゃくちゃいい笑顔で、教室を出た。
視界の隅に入った、琉生の表情。
「今更そんな表情しても、今日だけは譲れねぇよ」
ボソッと呟いた俺の声は、文化祭で賑わっている周りのざわめきによって、かき消されていった。
「――あ!春川くんっ」
衣緒さんの教室に向かう途中で、偶然衣緒さんと会った。
「あ、衣緒さ……ん」



