「――おーい、衣緒~?」 桃葉の声でハッと我に返る。 しまった。トリップしてた! 「次移動教室だよ、行こ?」 授業、終わってたんだ……。 「う、うん」 私は急いで次の授業の教科書などを用意して、教室を出た。 「さっきまで何考えてたの?」 桃葉が、ニヤニヤしながら聞いてきた。 返ってくる答えなんて、わかりきってるくせに。 「……琉生くんのこと」 「やっぱりね~」 絶対おもしろがってる、桃葉。 「彼のこと、本当に大好きなんだね」