ほんの数センチだけ顔を前に出して、私は微笑みながら言った。
図書室だから小さな声で囁いているように、聞こえてしまう。
「っ、……知ってます」
あれ?今、一瞬だけだけど頬赤くなった?
……気のせい、かな?
「じゃあ私、本見てくるね」
「あ」
「なに?」
私を引き止めるなんて珍しい。
琉生くんは一度言葉を呑み込んだが、目を伏せて、すぐに私にまた向けた視線。
「クッキー、美味しかったっす」
真っ直ぐな彼の視線から、伝わってくる。
もう食べてくれたんだ……。
嬉しくて、嬉しくて。
たまらなく、幸せを感じた。



