嘘はついていない。
ただ、言葉にしていない部分が多いだけ。
桃葉は私の曖昧な言葉を聞いてすぐ、隠された“言葉”を読み取った。
勘が鋭い桃葉。
桃葉は、私の右手をギュッと自分の両の手で握り締めた。
「桃葉?」
右手に柔らかな温かみを感じ、私は顔を上げる。
そこには、切なそうに唇を噛む桃葉がいた。
「……よくわかったね」
私が考えていること、絶対わからないと思ってた。
でも、桃葉にはわかっちゃうんだね。
「だって、衣緒の親友だもん。わかるよ」
桃葉の切なげな表情の上に貼り付けた笑顔が、私の胸を締め付けた。
桃葉の透き通った声が、焦っている私の心臓を落ち着かせていく。



