「じゃあ、北村さんと楽しい日々を過ごしてあげてね」
「は、はい?」
保健医の発した意外な言葉に、俺は思わず目を丸くする。
先輩と、楽しい日々……?
なぜいきなりそんなことを……。
俺はなにもわからないまま、ぎこちなく頷き、保健室を出た。
意味がさっぱりわからない。
保健医のあの言葉には、どんな真実が隠されているのやら。
俺は、まためんどくさいことに巻き込まれた気がしてならなかったが、ひとつため息をこぼしてから、教室へ向かった。
北村先輩は、不思議な人だ。
脳裏に彼女の笑顔が浮かび、俺は無意識にフッと笑った。
その笑みを、俺自身さえも自覚しないまま、俺は足を動かし続けた。



