保健医が声をあげて俺を引き止める。
俺は「なんですか?」と言って、顔だけを向けた。
「静野くん、だったわよね?」
「はい、そうっすけど…」
「あなた、知ってるの?北村さんのこと」
保健医は、“何を”とは言わなかった。
いや、あえて言わなかったのだろう。
俺は、保健医の言葉を察しながら、首を振った。
保健医が言いたいこと、きっとそれは、先輩にとって大切なこと。
俺が今日知った“何か”と、深い関わりがあること。
なぜか、そう思った。
あくまで俺の推測だけど、確信に近い予想。
保健医は、俺の応えに「……そう」と小さく呟いた。



