あ。
そういえば俺、綱引きに出なきゃいけねぇんだった。
もうすぐ始まっちまう。
俺は先輩を起こさないように、ゆっくりと先輩の手から自分の手を離す。
そして静かに保健室を出た。
すると、タイミング良く、先輩の友人が保健医を連れてきてくれた。
「衣緒は!?」
「先輩なら、今寝てます」
「ごめんなさいね、わざわざ」
保健医は俺にそう言って、保健室へ入っていった。
先輩の友人も保健医のあとを追って入ろうとしたが、扉を開けようとした手を一旦止めた。
「……ありがと。衣緒を見つけてくれて」
「い、いや、別に」
見つけるもなにも、生徒玄関にいたし。
必死に探したわけじゃないし。



