「桃葉、先行ってて」 「え、でも……」 瞳を揺らしている桃葉に、私は目を細める。 「大丈夫だから。ね?」 「わ、わかった…」 渋々桃葉は頷いて、先にグラウンドへ向かった。 ――生徒玄関に私と後輩の女子三人しかいなくなった。 すると、後輩の女の子の一人が口を開いた。 「あの」 その声は、鋭くて冷たくて、凍えそうだった。 「な、なに?」 思わず声が震えてしまい、私はグッと歯を食いしばる。 怖がってはいけない。 先輩らしく堂々としなくちゃ。