「あれ?衣緒さん?」
後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには春川くんが。
「春川くん!
春川くんも借り物競争に出るの?」
「そうなんすよー。競技決める時サボってたら、5つも出ることになっちゃって」
「5つも?大変だね」
あははと冗談半分で笑う春川くん。
大変そうに見えないけどね。
「さっき琉生、一位でゴールしてましたけど……見ました?」
「100メートル走でしょ?見たよ。かっこよかった!!」
「かっこいい」という言葉で済ましたくないほど、キラキラしててかっこよかった!!!
思い出すと、にやけちゃう。
「……イタイ」
吐き捨てるように小さく呟いた春川くんの言葉は、私の耳に届く前に消えてしまった。



