恋愛対象としてではなくても、琉生は衣緒さんのことを少しは気に入っているようだ。
ライバル……ではないか。
俺は完璧失恋だし。
衣緒さんの笑顔に愛しさを感じたのは、俺だけなのか。
それとも――。
チラッと視線を琉生に向けると、
琉生はジッと衣緒さんのことを見ていた。
迷惑そうな視線ではなく、優しげな視線で。
初めて見た、琉生のこんな表情……。
長年一緒にいても、今まで見たことがなかった表情。
無愛想なのはやっぱり変わってないけど、
柔らかく優しそうで、穏やかなそんな表情。
そんな表情が表れたのは、きっと…いや絶対、衣緒さんがいたから。
あぁ、また胸が痛くなってきた。



