あまりにも平然とした顔で衣緒さんがそう言うから、俺は「死ぬまで」という言葉に驚くことすら忘れていた。
どうしてそんな簡単に、一生の恋だと言えるのだろうか。
琉生がこのまま衣緒さんに恋に落ちずに、衣緒さんが卒業してしまったら、
衣緒さんはどうするのだろうか。
それでも衣緒さんは、琉生のことを忘れないのだろうか。
もう二度と会えなくなっても、好きでい続けるのだろうか。
「春川くん?どうかした?」
俺の顔を覗き込むようにして、急に黙ってしまった俺の様子を見た衣緒さん。
俺は小さく首をかしげている衣緒さんにドキッとしながら、反射的に視線を逸らした。
「す、すごいっすね。死ぬまで、なんて。俺にはそんな勇気ないっす」
衣緒さんは琉生に溺愛中なのに、このまま“死ぬまで”衣緒さんに片思いする勇気なんて俺にはない。
俺はただ、衣緒さんにこの気持ちがバレないよう、一生隠し通すだけ。
それしかできない。



