横顔の君





「ただいま。」

「お帰り、遅かったのね。」

「え?う、うん……」



家に帰った私は、いつもみたいにすぐに部屋には戻らず、居間でテレビを見てたお母さんの隣に腰を降ろした。
最近、休みというといつも照之さんと過ごしてて、お母さんと一緒にどこかに行くようなことはなかった。
そのことを悪いと感じながらも、なかなかお母さんのために時間を取ることが出来なかったから…



「お母さん…じ、実は、私ね……」

「どうかしたの?」

「あ、あのね…」

「どうしたのよ、おかしな子ねぇ…」

お母さんに見られると、余計にうまくしゃべれない。



「実は…私…今、お付き合いしてる人がいるの……」



なんで、告白してしまったのかわからない。
でも、なぜだか私は照之さんとのことを話していた。



「そう、やっぱり……」

「え?」

「気付いてた…
あんた、わかりやすいんだもの……」

「そ、そうなの?」

お母さんは肩を震わせ、くすくすと笑った。



「今日もその人と会ってたんでしょう?」

「う、うん……」

お母さんにはすっかりバレてた。
それなのに、嘘なんか吐いて…はずかしい。



「そう…良い人なの?」

「うん…そのうち、お母さんにも会いたいって言ってた。」

「あら…もうそこまで話は進んでるの?」

「ご、誤解しないでよ!
お付き合いしてるってことを話したいみたい。
べ、別に結婚とかそういう話が出てるわけじゃないからね。」

「そうなの?残念ね。
妹の季代の方が先に片付いたんだから、あんたも少しは焦りなさいよ。」

「もう、お母さんったら!」

お母さんの肩をばしんと叩いた。



本当にそうなったらどれほど嬉しいだろう。
照之さんと結婚出来たら、家はすぐ傍だから、お母さんのことも心配ない。



隠岐紗代…
言葉の響きはちょっと微妙だけど、漢字にしたらけっこうおさまりは良い…



「なに、あんた、にやついたりして…
はは~ん、今、彼氏のこと考えてたな。」

「ち、違うわよ!
にやけてなんかないってば!
わ、私、お風呂に入って来ようっと。」

私は焦ってその場を後にした。