私達の恋愛は本当に順調だった。
熱く燃え上るような愛ではなかったけれど、とても心地の良い温かさを保っていた。



「紗代さん、急に何なんですが…良かったら、今日は一緒に夕飯を食べませんか?」

いつものように隣町に買い物に行ってる時に、照之さんがそんなことを口にした。



「はい、喜んで。
どこに行きますか?」

「良かったら、うちに来て、手料理を作ってもらえないかな…なんて、厚かましいですか?」

「え?い、いえ…私で良ければ…」

「良かった!それじゃあ、お願いしますね!」



ちょっとびっくりしたといえばびっくりしたのだけれど、こういうのも良いかな?なんて思えた。
私達は、一緒に買い物に行って、食材を買い揃えた。



「さ、こっちです。」

「お邪魔します。」

レジには座ったことはあるけれど、それより先にはまだ入ったことがなかった。



(わぁ、けっこう広い)

レジの奥が自宅になっていたのだけど、そこは思ってたよりも広い空間だった。
開放感のある広いリビングから続くキッチンもこれまたずいぶん広い。
大家族向きの広さがあった。
しかも、シンプルで使いやすそうな作りになっている。



「調理器具は、だいたい揃ってると思うんですが、もし、何か足りないものがあったら言って下さい。」

「は、はい。」

「鍋類はここに入ってます。
それから、食器はここにあります。」

「わかりました。」

「では、僕は店にいますので…」

そう言うと、照之さんは私をひとり置いて店に行ってしまった。



(仕方ない…頑張るか…)



私は、調理に取り掛かった。
他人のキッチンで料理をすることなんてめったにないから、少し緊張はするけど、何も作り方が変わるわけじゃない…
調理器具は照之さんの言ってた通り、ほとんど全部揃ってて、どれも新品みたいに綺麗だった。
普段はお総菜ばかり食べてるってことだから、多分、どれもあんまり使われてないんだと思う。