横顔の君

*



「今回もすごいですね。
でも、あんまり気を遣わないで下さいね。
僕はおむすびと卵焼きだけで、十分ですから。」

今度もまたお弁当を作った。
もちろん、また予算も手間暇もいつもより掛けて。
だけど、その労は報われる。
照之さんは、とても喜んでくれるし、おいしそうにパクパク食べてくれるから。



照之さんは先日買った服を着ていた。
そのせいか、今日は最寄駅から一緒の電車に乗って来た。
服装のコンプレックスがあったっていうのは、やっぱり嘘ではなさそうだ。
そんなこと、気にしなくて良いのに…
逆に、照之さんがあんまり格好良くなりすぎたら、こっちの方が気おくれしてしまう。



「ここはずいぶんひんやりしてますね。
夏なんか、気持ちが良さそうですね。」

「そうですね。
また夏にも来てみましょう。」

他愛ない会話…
ハーブを見てまわって、お腹が減ったらお弁当を食べて…



三十代のデートにしては、ちょっと穏やか過ぎるかもしれない。
でも、私達はまだ恋人同士ってわけでもないし、これはデートでもないんだから…



「あぁ、おなかいっぱいです。」

今日も照之さんは米粒の一粒も残さずに、完食してくれた。
頑張って作ったものだから、残さずに全部食べてもらえると本当に嬉しくなる。



「本当ならここで抹茶パフェでも食べたいところでしょ?」

「ハハッ、よくわかってらっしゃいますね。」

あんまり冗談は言わない方だけど、思い切って言ってみたら笑ってもらえた。



「吉村さんは、ハーブとかはお好きなんですか?」

「はい、けっこう好きです。」

「そうでしたか、良かった…
ハーブは好き嫌いが分かれますからね。
お誘いした後で、そんなことに気付いて、大丈夫だったかなってちょっと心配してたんです。
じゃあ、さっきの喫茶コーナーで、ハーブティでもいかがですか?
抹茶パフェがないのは残念ですが…」

私達はお互いに微笑みながら、喫茶コーナーに向かった。



照之さんと一緒にいると、本当に気持ちがやすらぐ。
言ってみれば、照之さんはハーブみたいな人だ。
私の心をとてもリラックスさせてくれる。



本当ならここで手を繋ぎたいところだけど、それはまだ早い。


私にはそれを言い出す勇気もないんだもの…



そんな自分自身に少々落ち込みながらも、ただ並んで歩けるだけでも嬉しかった。