横顔の君

*



「こんばんは。」



それから数日後、私はまた鏡花堂を訪ねた。
またいつものように、例のファンタジー小説を買う。



「こんばんは。
あ…一巻、抜けてるんですね。」

「はい、でも、大丈夫です。
どこかで探しますから。」

いつもなら10巻買うのだけど、今回はその中の一巻が抜けていた。



「あ……」

照之さんの視線が、私の首元に停まった。



「いつも付けさせていただいてます。
本当にどうもありがとうございます。」

それは嘘偽りのない現実だった。



「良いんですか?
無理しないで下さいね。」

「無理なんてしてません。
あ、私、誕生日のこと話しましたっけ?」

「え?いえ…
お聞きしていないと思いますが…」

「やっぱりそうですよね。
実は私、6月生まれなんです。
それで…6月の誕生石はパールなんです。」

「えっ!?そうなんですか?」

やっぱり偶然だった。



「実は、お店の人が、パールが無難だっておっしゃったんですよ。」

「そうだったんですか。
でも、嬉しいです。」

緊張はしたけど、今日は素直にそう言えて良かった。
照之さんも、どこか嬉しそうな顔をしていた。



「吉村さん…今度、靴を買うのに付き合っていただけますか?」

「はい、そんなことならいつでも…」

「先日は、靴のこと、すっかり忘れてたんです。
考えてみたら最近何年も靴なんて買ってませんでしたし、今度、服に合うものがほしいなと思いまして…」



嬉しかった。
また、照之さんとどこかに出かけられる。
こうして何度も会ってたら、もしかしたらいつか私にも勇気が出て来るかもしれない。



好きだという想いを伝える勇気が……