横顔の君

*



(……どうしよう?)



どんな本を選べば良いのか、すっかり迷ってしまって決められない。
いや、読みたい本ならいくらでもあるのだけど…
要するに考え過ぎ…
こんな本を選んだら、馬鹿にされるんじゃないかとか、つまらない人間だと思われるんじゃないかとか…
そんなことを考え始めたら、もう私にはどれを読んだら良いのかまるでわからなくなっていた。
迷う間にもどんどん時間は過ぎていく…



あんまり長い間悩んでるのもおかしいし、どうしよう…!?



もはや、砂粒程の決断力もなくしてしまった私は、あの人のところにいくという暴挙に出た。



「あ、あの…」

私が声をかけると、あの人はそうっと本から視線をはずして私の方を見た。



「あ、あなたはさっきの…
何か?」

「え…は、はいっ
あの…実は本を選ぶのに迷ってしまって…
そ、それで、おすすめなんてないかなぁ?と…」

私はあの人の顔も真っ直ぐに見られず、俯いてぼそぼそとそんなことを話した。



「おすすめですか?
えっと…どういうジャンルのものがお好きですか?」

「えっ!?」

それは想定してなかった質問だった。
本当はファンタジーとかロマンチックな恋愛ものだけど、そんなことを言ったら、馬鹿にされるかもしれない。
だから、咄嗟に嘘を吐いた。



「じゅ、純文学とか、史実に基づいたものとか…」

馬鹿な女じゃないって思われたくて、そんなことを口にしていた。



「純文学に歴史ものですか、お若いのに渋いですね。」

「いえ、そんな…
あ、あの、あなたはどういうものがお好きなんですか?」

私は、意外にもそんな質問を返していた。



「僕は活字中毒ですから、どんなのでも読みますよ。
真面目な哲学書も軽いラノベも…」

「ラノベ?」

「ええ、携帯小説だって読みますよ。
さすがに横書きはちょっと読みにくいですけどね。」

あの人はそう言って笑った。
子供みたいに無邪気な笑顔で…



(可愛い…)



その笑顔に、私は急に顔に熱を帯びるのを感じた。