横顔の君

「そうだと思って、私、彼から離れたの。
電話も着信拒否して、仕事場への行き帰りも彼の家の近くを通らないようにして…」

「そりゃあそうよね。
でも、私だったら一言言ってやらないと…ビンタの一発でもくらわしてやらないとおさまらないけどね…」

まどかならきっとそうだろう。
私みたいにじめじめしたタイプじゃないから。



「それで、ずっと彼を避けてたんだけど、ある日彼と会ってしまったの。
私は逃げようとして自転車で走り過ぎようとしたら、彼が前に飛び出してきて、それでぶつかって転んで怪我をして…」

「えっ!はねちゃったの?
彼は大丈夫だったの?」

「うん、頭に怪我はしたけど大丈夫だった。
それで、病院に連れて行って、その後家で話してたら、突然、お客さんが来てね…、本当にびっくりしたわよ。
だって、その人はバーで見たあの人だったんだもん。
その人ね…彼の弟さんだったの
それも双子の…」

「双子!?なんだぁ…そりゃあ、間違えるのも当然よね。」

「当然なんかじゃないわ。
よく見れば彼と弟さんは着てるものも雰囲気も全然違ったのに…彼を信じることが出来なかったこと…今でもすごく悔しい。
私、実はあの時、トモと圭吾のこと思い出してしまったんだ…
長い間、私に隠れて付き合ってて、その間、私はそのことに少しも気付いてなくて…
またあの時と同じように騙されてるんだって思い込んじゃったんだ…」

恥ずかしいけど、自分の本心を私はすべて話した。



「そっか~…そりゃあ仕方ないよ。
あんなことがあったら、誰だってそうなるって。
あ…そういえば……トモ達、別れたって知ってる?」

「えっ!知らない。
二人のその後なんて、誰からも聞いてないよ。」

それは、本当に思いがけないニュースだった。



「なんかね、圭吾の浮気が原因でずっと揉めてたらしいけど、最近、ついに別れたって聞いたよ。」

「……そうなんだ。」

それ以外、どう言って良いのかわからなかった。
確かに、あの二人にもう全く遺恨がないとは言えなかった。
でも、二人が離婚したときいても、嬉しいことも気持ちがすっきりするようなこともなかった。
むしろ、そんな話は聞きたくなかった。



そう…あの二人はもう私の人生には関係のない人だから…



私はもう今までの私とは違う。
彼と親友に騙されたことだって、乗り越えられたと思う。
だって、私には絶対的に信じられる人がいるんだから。