横顔の君





それからはまたいつもと変わらない日々が続いた。
私達の間には、何の問題もなく、うまくいっていた。



ただ、私の心の片隅にあの時のことが小さくわだかまっていて…
あれは見間違いだとどんなに思い込もうとしても、どうしても完全に打ち消すことは出来なかった。



「紗代さん…お母さんのことなんですが……」

「す、すみません。あと少しだけ待って下さい。
あ、あの…まずは私から言わないと、多分、母もびっくりすると思いますし…
そ、それが、その…どうにも気恥ずかしくって…それで、なかなか言い出せなくて……」

「そうですか…わかりました。」



最近、照之さんは何度か母に会いたいと、口にするようになった。
それは、素直に考えれば、照之さんが私との交際を真剣に考えてるということ…
だから、当然嬉しいのだけれど、でも、どこか信じきれない…そう、あの時のことがあるから、前に進めないのだ。



(だめだわ…逃げてばかりじゃ…
なんとかしないと…!)



でも、やっぱり言えない…
直接、照之さんにあのことを聞いてみる勇気は、私にはない。
だったら……