横顔の君





「まどか、本当にごめんね。」

「ううん、こっちこそごめん。
あんたがそんなにお酒に弱いなんて知らなかったから…」



次の日、私はやっぱりまだ元気になれなくて、並ばずに入れるお店でランチをとってから、まどかと別れた。
まどかとしたら、今日も私と一緒にもう少しお店めぐりをしたかっただろうに、本当に悪いことをしてしまった。



まどかに相談しようかなって思うこともあった。
でも、見栄なのか、やっぱり言い出せなかった。
…また、だまされてるって思われたくなかったのかもしれない。



でも、ひとりで抱え込むには、それは重すぎる問題で……



次の日、私は仕事帰りに鏡花堂に寄らなかった。
寄られるはずがない。
あんなことがあったのだもの…
すると、その晩、照之さんから電話があった。
いつもと少しも変わらない声だった。



「あ、紗代さん…今日はどうされたんですか?」

「あ…あぁ、友達と会ってる時にはしゃぎ過ぎたのか、今日は身体がだるくて…」

「そうだったんですか。
大丈夫ですか?」

「は、はい…」



まるであの時のことが夢か幻みたいに、照之さんはいつもとどこも変わらない。
でも…あの時もそうだった。



私は彼や親友の変化に、少しも気付いていなかった。



そう思う気持ちと同時に、もしかしてあれは人違いだったんじゃないかっていう疑いも出て来ていた。
照之さんはそれほどまでに変化がない。
人ってここまで嘘を吐き通せるのかって思うほどに…



それに、照之さんらしき人を見たのはほんの一瞬、しかも、あの店は薄暗かったし、私は疲れてたし飲みなれないお酒を飲んでいた。



(確かめてみよう…)



明日、鏡花堂に行って、照之さんの態度が本当に少しもおかしくないか、確かめてみようと決意した。