幸せの先







「かなり長い間、暴力を振るわれていたんだね。



あと気になっていたのが、失声症になった理由なんだけど。



失声症になったのは、ご両親が亡くなったショックでと書いてあったけど、ご両親が亡くなってすぐには発症してないよね?


事件からかなり時間がたってからだ。


失声症になるほどの大きな衝撃が、何か他にあったんじゃない?」





先生がそんなことまで調べているなんて、思ってもいなかった。



なぜお父さんたちが死んでから、失声症になるまで、間が空いていることを知っているんだろう。



私はタブレットから顔をあげて、先生を見た。




「あみちゃんの通っている高校に、情報提供をお願いしたんだよ。
僕、あみちゃんの通っている高校の理事長とは、ちょっとした知り合いなんだ。

それで勝手ながら君の個人情報、5組適用の書類を送ってもらったんだ。」




そういうことか。


理事長という人はよく知らない。


理事長は強面で、若い人のイメージしかない。





入学式で遠めから見か、その一回きりでほかの場面で会う機会なんてない。




それもそのはず。


一回も、学校の行事はおろか、集会にも参加したことのないのだから、理事長の顔をよく覚えていないし、どんな人なのかもしらないのは当たり前だ。