幸せの先






「今日知り合ったばかりの子なんだよ。」




俺が黙っていると、正樹がかわりに答えた。




「そうか。なら話さない方が良かったかもしれないな。」




「いや、これでなんとなくわかった。こいつ話せないんだ。」



あみの手を握り、俺がそう言うと総一郎は眉を寄せた。



こいつ本当、手冷えな。




「失声症ってことか?」



頷くと総一郎は黙ってしまった。




「DVには種類がいろいろあるんだ。

多分この子は身体的虐待の他に、性的虐待を受けている。


それが始まったのには、きっかけがあったはずだ。



それがわからないと医者の俺たちには何もできないんだ。



だからお前たちが、この子の今の状況を聞き出せ。」