幸せの先


動揺している俺を見るのはきっと全員初めてで、少し狼狽えていた。


でも俺はこいつらの頭だ。


「さんきゅうな。」


そう徹に言うと


「男からお礼言われても全然嬉しくなーい。」


と言われた。

いつもの俺が戻ってきた。


「そろそろ車がくる。下に降りよう。」


正樹のその声にみんな立ち上がり、俺はあみを抱き、徹は酸素マスクを抑えながら、慎重に階段を降りて車に乗り込んだ。

一緒に車に乗り込んだのは、徹と正樹。

あとの3人は何も言わずに、バイクを取りに駐車場へ向かった。

あみはさっきよりも呼吸は確かになっている気はするが、意識は戻っていない。


「出せ。急げ。」


そう正樹が言うと、車は慎重にかつものすごいスピードで学校を出た。

走っている間とりあえずイライラしている俺に、徹は「大丈夫だから、そんな顔をしないで。」と言った。


こんな状況で、平常心でいられるわけがないだろ。


正樹に当たってもしかたないが、なにもできない自分に腹が立って、イラつく。

胸の中のあみが、少し穏やかな寝息へ変わった気がして俺に少しだけ余裕をくれた。


「もう着くよ。」


正樹のその声に少し落ち着きを取り戻した。