「お前、周りの声気にならないのか?」
私は自分の世界から現実に戻り、賢一さんからの質問に頷いた。
「お前すげーな。」
そう言って賢一さんは笑った。
なんで褒められたのかわからないけど、褒められることなんて久しぶりのことで、嬉しくて私も笑い返した。
(どうしたの?)
「・・・いや。」
なんでもねえ。と顔を背けた賢一さんの顔が赤い気がする。
ざわざわ、ざわざわ。
野次馬からの悲鳴のような声で、こちらを見ている人たちを見ると、みんな頰を赤く染めていることに気づいた。
「あの子、なんかすんごいいい子そうじゃない?」
「ってゆーかすんごい美人よね。」
「あれにはかなわないわよね…。」
うーむ。みんな、私のことを言っているのだろうか。
私の方をみて、美人と言っているのかな?
賢一さんのことを美人とは言わないよなー。
んー?わからん。
「なにを悩んでる?」
(みんなの言ってることの意味)
と口を動かすと、賢一さんは一瞬考えてから、気にすんなと頭をなでられた。
賢一さんはまた歩き出したので、それを追って私も歩きだした。
野次馬の人数は相変わらずすごいけど、さっきのようなヤジは飛んでこなくなった。

