よく分からないがとりあえず頷いた。

次の瞬間、賢一さんが何を言いたかったのかわかった。


「何あの女。」


「賢一さんの横歩いてんじゃねーよ。」


女子のみなさんからの非難の声が、あちこちで上がっている。


どうしてだろう。


昔から他人から関心を向けられたことが無いからだろうか、それとも人付き合いをちゃんとしてこなかったからだろうか。

こういう声をあまり気にする習慣がないため、全く気にならない。

むしろ初めて自分が注目を集めているのかと思うと、なんだかむずむずしてくる。

私は多分側から見ていると、平気な顔をしてというか注目されていることに照れてニヤニヤ顏で歩いていたと思う。

自分でも気持ち悪い顔をして歩いていると自覚をしていたが、横を見上げると賢一さんはビックリした顔をして、私を見ていることに気づいた。

引かれてしまうと思い、急いで真顔に戻そうと、とっさに頰を横に引っ張った。


「お前何してんだ!?」


腕を掴まれて賢一さんの方を向かされ、顔から手を離した時には顔ががジンジンしていた。


「お前、変なことやるから顔赤くなってんじゃねーかよ。なにやってんだよ。」


そう言った賢一さんは私の頰をやさしく撫でた。


凄くあったかい手だ。


あれ、なんかなつかしいな。


お父さんを思い出す。


ふっと、心にあったかくも切なさが通りすぎた。