side あみend
賢一さんはとりあえず歩くのがはやいようだ。
さっきまで見えていたのに、角を曲がってから完璧に見失った。
どうせ売店だし、ゆっくり行こうかな。
追いつくことを諦めた私は決して歩くペースを早める事なく売店を目指していると、前から歩いてくる女の子2人が興奮気味に話している声が聞こえた。
今授業中なのに、この人たちは何をやっているんだろ?
何をそんな大きな声で話しているのか気になって、ついつい盗み聞きしてしまった。
「やっぱり、賢一さんかっこいいねっ!」
「オーラがやっぱり違うわー!!」
どうやら彼女たちも売店の方から帰ってくるところで、賢一さんとすれ違ったようだ。
賢一さんって有名人なんだ。
今日初めて会った人はどうやら相当モテているらしいという事を知った。
彼女達はなおもこうした様子で話つづけている、その内容で唯一耳に残るフレーズを発した。
「でも、実家ヤクザなんでしょ?」
片割れの女の人はヤクザなんてといった感じで、不愉快そうに言った。
ヤクザ…。
あのヤクザかな?
他にヤクザなんてないか。
そーなんだ。
賢一さんが極道の若頭なんて、なんか想像できるような、できないような。
でも確かにケンカは強そうだなー。
っていうか、なんで私こんなに鮮明にヤクザの世界をイメージできたんだろう。
なんて考えながら歩いていると、誰かにぶつかってしまった。
やってしまった‼︎
この学校で誰かにぶつかる恐怖は、経験したことがなくても知っている。
以前廊下が賑やかだなっと思って覗いた先では、肩がぶつかったとかで一般生徒にすごい形相で詰めている不良さんがいたのを見かけて以来、廊下は最新の注意を持って歩いていたのに。
変なこと考えていたら、つい注意力散漫になってしまっていた。
謝罪の意味を込めて急いで頭を下げた。
そーっと顔を上げるて相手を確認すると、ぶつかった人は賢一さんだった。

