幸せの先

「天に昇っていく龍、その口先には月。





龍が月を抱くという意味で描かれている。





「空龍」はうちの組の、それも上の者しか入れられない、



彫れる彫り師もこの世で1人しかいない。





青柳の姐さんが見前違えるわけがないとは思っていたが、



やはり間違いではなかったな。




この子はずっと探していた、姉さんの子供だ。




いつだったか、



あみがまだ物心つかない頃に、うちに来た事があった。




ほとんど誘拐みたいなもんだったがな。





姉さん達がなかなか本家に娘を連れてこないから、親父が痺れを切らして。



無理やり連れてこさせたんだ。





その時彫らせたのがこの刺青だ。





多分姉さんはそれが嫌で、


もともとこの家も好きじゃなかったし、



あみを連れてこなかったんだろうな。




その時大激怒して、




それ以来、生きてうちの敷居をまたぐ事はなかった。