幸せの先

なぜまっすぐ来たのに、戻ったはずなのに、なんで着かないの。

自分が方向音痴だという事は自覚しているけど、まさか家という建物の中で迷うとは思わなかった。



さっき賢一さんに簡単に頷いてしまった事を後悔する。

ちょっと曲がるんだっけかな…?

どうしよう。
タブレットも広間においてきちゃったし…

むやみに歩き進めて行くと、聞き覚えのある声がした。

「遅かったですね。」

この声は、さっき玄関にいたスーツの人の声だ。その角を曲がれば、居るはず。
戻る道順を教えてもらおう。

「また暴れた奴らがいてな。締めてた。」

曲がろうとした時、スーツの人てはない、他の声が曲聞こえてきてピタッと足が止まる。

そこに居る人物は2人だろう。
どこかで聞き覚えのある声。
奥底に眠る私の記憶が、現れては消える。

「聞いております。お疲れ様でした。」

「本当、お疲れだよ。ガキじゃあるまいし。それより、賢一が女連れてきたって。ガキじゃあるまいし、女できたくらいで俺を呼ぶなよ。」