幸せの先








そうお母さんが言うと、賢一さんは私たちが来たことに気づいて立ち上がった。









「相変わらず風呂なげーな。」






お母さんの横に立つ私の所まで来た賢一さんは、お母さんに向けてそんな事を言うと、お母さんもしらーと返す。







「女を知らない者の発言ね。




女ってものはどこへいようとも、話が長いのよ。」








「親父、どっか出かけたぞ。」






「組のことでしょ。




でも今日は帰り早いはずよ。




あみが来たら久々に宴会だって、ここ何日な気合い入ってたから。





大広間でご飯って言ってたから、準備しなくちゃ。




今日は来客が多いみたい。」







何の話かついていけていないが、賢一さんが後で説明してくれるだろう。





とりあえず会話だけ聞くことに徹する。




「最悪だ…。




俺らは途中で抜けるからな。」






渋い顔をしてお母さんを見る賢一さん。






宴会ということは、賑やかなのは間違いなさそう。




賢一さん、賑やかなのが苦手なのかな?






「別に構わないと思うわよ。あみも初めてだし、そんな長くは引き止めないわよ。」








そう言って私の頭に手を乗せるお母さん。






賢一さんはお母さんに似てるのかな。





頭に手を乗せるくせ。





身長が高いお母さん。





多分170くらいあると思う。





私が155だから、結構身長差がある。




それよりももっと高い賢一さん。






いったい身長はどれくらいなのだろう。






お父さんもかなり高かった。





そんな事を思いながら、お母さんを見上げると、




あら、大変!と、何かに気がつくお母さん。






「はやく髪の毛乾かさないと風邪ひくわね。



部屋に行って乾かしてらっしゃい。




賢一、先に部屋案内して。」






「わかった。」






確かにまだ髪の毛乾かしてなかった。









「あみ、部屋行くぞ。」





そう言って先に歩き出す賢一さん。





私はお母さんに頭を下げて、賢一さんを追いかける。






あれ、これデジャブ?





ついこの間、売店に行く時も確かこんな感じだった。





あの時初めて会った人と、今は一緒に暮らすことになるなんて。








あの時は思ってもみなかった。







そんなことを考えながら賢一さんの後を追いかけていると、いつの間にか追いついて、あの時のようにぶつかる事はなかった。