誰かに肩を揺すられて、現実に引き戻された。
目を開けるとそこには素晴らしく顔立ちの整った男の人がいた。
「おい、お前大丈夫か?」
そう言った少し怖そうなそのお兄さんは、寝ていた私の体をそっと後ろから支えてくれて起こしてくれた。
頰に伝うなにかに、その時気づいた。
私、泣いていたんだ。
でも一体どんな夢を見ていたのか思い出せないでいた。
いつもそうだ。
夢での幸福感は何となく感覚で覚えているのだが、内容がどうしても思い出せない。
思い出せたら、こんなつまらない日常が少しは楽しくなるのになといつもがっかりしてしまう。
「おいっ!」
状況把握に時間がかかり、そこにいたお兄さんの存在をすっかり忘れていた。
お兄さんの方を向くと、少し不機嫌そうな顔をしている。
でもやっぱり恐ろしいくらいに、顔が整っていて、おもわずじーっと見てしまった。
「何見てんだよ。」
そう言われても見つめていた私は、お兄さんの手で目隠しされてしまった。

