『金子汐里』
いつ、書いたのであろう落書きが残っている。
消すに消せなかったその文字に
何度指をなぞらせたことだろう?
「ハルー!見せてよー。」
「…なんでも、ないよ。」
俺はサッと消しゴムをすべらせると
しーの前にまた、教科書を置いた。
「ハルくん、いかがわしいものは隠したかね〜?」
イタズラっぽく笑うしーに
「そんなものないよ。」
と、そっけなく返すと
「えー、どうかなぁー?」
なんて、言いながらページをまためくりはじめた。
「しー、自分の教科書は持ってきてないの?」
「うん。」
「枕は持ってきたのに?」
「うん。だって枕変わると寝れないんだもん。」
「……………。もしかして、しー今日泊まってくつもりか?」
まさか…な…。

