【短編】スキキライダイスキ

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─日向side─

蕾ちゃんとトレーニングを始めて二週間。

今日が決戦の日だ。
俺はテニス部に入る気はないし、入らない。

負けるわけにはいかない。しょうもないけど。

元から運動神経がそれなりに良かったから別にわざわざコーチをつけるほどでもなかったのだ、本当は。

簡単に言うと、蕾ちゃんに近づく口実。

冷たいようでものすごく優しい蕾ちゃんがずっと気になっていた。
高一の頃からだ。

篠宮さんに話しかける蕾ちゃんの笑顔と、クラスでの人を寄せ付けない態度。

どこか違和感を感じていた。
ときたま寂しそうな表情さえ見せていた。

好んで《独り》になるやつなんていないから。

気になって気になって──いつの間にか、恋をしていた。

そして、

「蕾ちゃん、俺が勝ったら付き合って」

「え?」

真っ赤な顔をするから魔が差した。

「し、試合まえでしょ。何言って…」

「嫌なら、逃げて」

顔を近づける。

唇に触れた、温かいもの。

彼女は、逃げなかった。

でも。

「ごめん、無理」

何で謝るんだよ、そう言いたかったけど言葉が出てこなかった。

何で、そんな顔。
そんな泣きそうな顔をするんだ。

名残惜しくも審判に呼ばれて、コートへ向かう。

蕾ちゃんの表情と、痩せた身体に注ぎこむ大量の薬が気になっていた。


今までが、彼女の精一杯とも気づかずに。