【短編】スキキライダイスキ

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高一になる前の春休み、心臓付近に悪性腫瘍が見つかった。
余命は一年。延命治療はせずに、出来る限りの時間を過ごすことを選んだ。

小梅や家族と同じ時を生きられるのなら、ずっと一人きりで命を繋ぐよりもそっちの方がいいと思った。

だけど、新しい友達はいらなかった。
むしろ作らない方が幸せだ。
私は小梅と家族との時間を大切にするためにこの道を選択したのだから。

中三で発覚した緑内障もあるし、どうせテニスはできないのだから部活に入る必要もない。

少しずつ花弁を広げる桜の木を見ながらいつもの通学路を歩く。


「おっはよ、ナンバーワンテニス選手」

背後からかかった声は、小梅ではない。

第一そんな珍妙な呼び方はしないし、テニスを話題に出したりもしない。

「おはよう日向」

「わーエスパー?」

「分かりやすすぎなんだよ」

振り返ると日向のキラッキラのイケメンスマイルが私に向けられている。

「ま、そんなことはさておき」

「さておくなよ」

日向は楽しそうに笑う。何がそんなに楽しいのか。

「もう大丈夫なの?三日も学校休んでたけど」

「大丈夫だよ、ただの貧血だから。昔から親が過保護でね」

つきん、と心が疼く。

家族を盾にしたのと、──何で。

私こんな、日向を安心させるようなこと。

前みたいに関係無いでしょって突き放せば良かったのに。