誰にも見えないその影を




「えーつまんない! 僕遊びたいのに……」


がっかりするリョウくん。無理もないよね。あんなにキラキラした顔で嬉しそうに遊びを提案してくれたのに、聞いた私が断っちゃうんだもん。本当にごめんなさい。


――あ。いいこと思いついた。


「あ、リョウくん。お腹空いてない?」


気づけば正午を過ぎていた。


私に突進するほどこの子は元気に遊んでいたのだ。この時間になればきっと空腹も感じていることだろう。


「あ……うん。すいてる」


頬をほんのり朱色に染め、恥ずかしそうに顔を伏せるリョウくん。さっきの発言は別として、やっぱり可愛いとこあるじゃん。


「リョウくん。お姉ちゃんと一緒にお昼ご飯作ろうか」


かくれんぼができないのは私の勝手な都合。でも、それで終わらせてしまうのはさすがにかわいそうだ。遊ぶことはできないけれど、触れ合うことならきっと大丈夫だ。


「うん! 僕もつくる!」


さっきとは打って変わって、とっても嬉しそうな返事だった。笑顔もさっきよりずっとキラキラしていて眩しいほどだ。


コレだよコレ。子供が持つべきはこういう笑顔だよ。やっぱ子供はこうでなくっちゃ。私のあんな幼馴染みたいになっちゃダメだよ少年。発展途上とかそんな言葉、社会科目以外では使っちゃダメだからねマジで。悩んでる人はだいたい怒るよ。相手が私だったからよかったものの、他の人なら激おこだよ。激おこプンプン丸だよ。


「大丈夫なのか」


書類から目を離すことなくゼストが言った。まだ子供だぞ、と。顔には出さないけれど、どうやら彼も彼なりに心配しているらしい。


「大丈夫だよ」


ここまで元気だとちょっとは心配になるけれど、包丁やハサミは持たせないようにするし。小さな食器を取ってもらったり、コップやお箸の準備を手伝ってもらうだけだもの。


「とびっきり美味しいご飯作ってくるから、ゼストはもう少しお腹空かせて待ってて」


「じゃーね、お兄ちゃん」


そう言って、ゼストに向かって無邪気に手を振るリョウくん。私に対してもずっとこういう状態だったらいいのに。まあ私もそれなりに大人だから、子供に向かってそんなことは言わないけど。


おー、とやはりゼストは書類から目を離さない。


真面目にやってるんだかただの子供嫌いなのか。……でも、少なくとも後者はないかもしれない。こんな態度だったけれど、一応はリョウくんの相手をしてくれていたわけだし。


私はリョウくんを連れてキッチンというか食堂というか、そこに向かった。