「仕方ないだろ、ゼストはまだ外に出て仕事ができるような状態じゃないんだから」


「それはそうですけど……」


私とゼストは今、アスタさんの部屋にいる。詳しい仕事内容を聞きに来たのだが、探偵が子守をするってどうよ、と思った私たちはちょっとだけ文句を言ってやろうということにしたのだ。


「断れなかったんだよ」


私たちの粘り強さに降参したのか、アスタさんこの仕事が決定した理由を話した。


やっぱりかァァァ! そうなんだろうなとは薄々思ってましたけどね! でもまさかって思うじゃん。そのまさかを信じてみたいじゃん。アスタさんらしい理由だけれども、しっかりしてくだいよアスタさん。


「……わかりましたよ」


不満気に口を尖らせるゼスト。その気持ち、今回ばかりはわからなくもないよ。


「9時くらいになったら来ると思うから。今日から三日間よろしくな」


「え。三日間?」


素早すぎる反応を見せたのはゼスト。私に仕事の報告をしに来たゼストも今聞いたようだ。なんていうか……情報が不足しすぎている。


「そう。お前たちがいれば大丈夫だろ」


そう言いながらアスタさんは、俺だってちゃんと考えてるんだぞ的な素晴らしいドヤ顔を私たちに披露する。


いやそんな顔されても……。こちとらどういう顔をすればいいかわからないんですけど。ゼストにいたってはアスタさんを見る目が心なしかいささか冷たくなったような気がします!


「ルナ行くぞ」


「二人ともよろしくなー」


ゼストに腕を掴まれ、アスタさんの声を受けながらいつものように彼の部屋に連行される私。こういう扱いはいつになってもやめてくれないようだ。


子供が来るまではまだ1時間程度ある。子守なんて一度もしたことがない。子供と関わるのは、三週間前のあの日以来だ。


あの男の子は元気にしているだろうか。そういえば、そろそろ連絡してあげなきゃいけないな。お兄ちゃん、元気になったんだよって。いやでもそれは完治してからの方がいいのかな。


ていうか、そもそもゼストはあの男の子のことを覚えているのだろうか。怪我もかなり酷かったから、もしかするとそれどころじゃなかったかもしれない。アスタさんたちが駆けつけてすぐに倒れちゃったし。


でも男の子の方はきっと覚えている。あの子の満開の笑顔でありがとうと言われたとき、ゼストは一体どういう反応をするのだろう。


ちょっと見てみたいかもしれない。