「これは女友達の話なんですけど――」
翌日の午後3時20分。私は三つ年上の髑髏のバンダナの少年・キロさんの部屋に来ていた。
目的はもちろん、ここ最近ずっと激しく鳴り続けている心臓の音について、だ。自分ではどうにも答えを導けなかった。この音を静かにさせる方法もわからない。
「その子はある男の子と昔からの知り合いで、普通に喧嘩もするし、一緒に行動することもよくあるそうです。でも最近、その子は男の子と会うことに抵抗を感じているんです。男の子の方はそれに気づかずいつも通りの態度なんですけど、その子はどう接すればいいかわからないそうなんです。……キロさんどう思いますか」
もちろんこれは友達ではなく私自身の話である。ていうかそもそも私にそんな女友達なんていないからね。女友達すらいないからね。
アスタさんやソウヤさんのところにも行って同じように話して答えをもらおうとしたのだけれど、「あーはいはい」とか「そりゃアレだな」とか、答えにならない答えしかもらえなかったのだ。いやだから結局何ですか、とつっこみたくなるのも当然だと思いますけどみなさんどう思います?
というわけで、ここにいる20を越えた大人五人のうち二人は役に立たないことが判明した。あとの三人は今は仕事で出かけているため、今ここにいる中で一番年上であるキロさんに相談しに来た、というわけである。
ちなみにゼストは18歳。まあこいつに相談するつもりは毛頭ないけどね。逆効果だし。
「それってゼストのことだろ」
「ぐはっ」
ズバリと言い当てられた。彼の名前なんて一度も出していない。なのになぜわかる。さすが探偵業をしているだけある、ということか。私も探偵だけど。
やっぱり、という具合にちょっと嬉しそうな顔をするキロさん。
「あいつ、最近妙にルナの名前出してるからバレバレなんだよ」
ちょっと待ってたとえ事実だとしても今そんなこと言わないで! 私が正常でいられなくなる!
「でも意外だよな。ゼストって人には興味なさそうなのにさ――」
「すみませんキロさんに相談した私が間違ってました!」
私の心の訴えには当然気づかないキロさんの言葉をとっさに遮断する私。今の私の前でそいつの話題を出さないでほしかったのだ。
……とくん、とくん。
あぁまただ。またこの音がする。本当にこれは何なのだろう。どうしてこの音が聞こえるようになってしまったのだろう。どうしてこの音が聞こえるたびに少し苦しくなるのだろう。
わからないって、怖い。でも、わかってしまうのもなんだか怖い。知りたくないような知りたいような……あーホントわからない!
私はどうすればいいのだろう……。