誰にも見えないその影を




【side ゼスト】


ここに帰ってきてから約10分ほど経ってから、午後3時から会議を始めるということをアスタさんから伝えられた。ルナにも言っておいてくれとのことで、俺は確かにルナに直接伝えに行った。


そして今、午後2時54分。


ルナの場合、いつもなら開始時刻の10分前には集合している。――はずなのだが。


この日は違った。


6分前。他のメンバーもだんだんとこの会議室に集まってきている。だがそこに、彼女の姿はない。俺に見えていないというわけではなさそうだ。


でも、俺には一つ引っかかることがある。


昼間のコンビニでのあいつの様子。アレは明らかにいつもと違っていた。考え込んだような顔を見せたあいつ。いつものやりとりを思い出してみても、あんな顔は一度も見せたことがなかった。


なんとなく、嫌な予感がする。


普段あれだけ明るいために、何を考えているのかがわからないことがよくある。本音というものをなかなか口に出さないのだ。


……変なことを考えていなければいいのだが。


考え始めると落ち着かなくなる。


おそらく彼女は自分の部屋にいるだろう。そう思った俺はメンバーが集まってくる流れに逆らって会議室を出て、そのままルナの部屋に向かった。