誰にも見えないその影を




何もやる気がしない。


ここに帰ってきてからだいたい10分ぐらい経った後、午後3時に二階にある会議室に集まれとゼストから言われた。


そして現在の時刻、午後2時54分。


そろそろ他のメンバーのあの部屋に集まってきている頃だろう。でも私は、自分の部屋にいた。行きたくないというわけではないのだが、どう説明すればいいのだろう……。





行っても行かなくても、同じ。





そんな気がしていたのだ。


影の薄さにより、最終的に私はいないことにされるのだ。何度も言うようにそれは自分でも自覚している。だからこそ、行ってそれを改めて痛感させられるよりは、もう始めからその場にいなければいいという考えに至ったのだ。


コンビニの自動ドアにでさえ、感知してもらえなかった。


なのに。


「おいルナ」


どうして。


どうして、この声ばかり――。


「3時から会議っつったろ。遅れるぞ」


「……行かない」


「あの調査は主にお前の担当だろ。お前がいなきゃ始まんねーんだけど」


「……知らない」


どうせみんなには私が見えないんだもの。会議に参加したって意味ないじゃん。


確かにこの浮気調査を任されたのは私だ。ゼストがそうなるようにしたんだから。


でも、結果的に証拠となる写真を集めたのはゼストだ。私がそこに行って状況を説明するよりは、ゼストがみんなに言った方が早い。


「じゃ、お前の手柄全部もらうけどそれでもいいのか」


「……勝手にすれば」


私は何もやっていない。ただ単に、ゼストと一緒にいただけ。そんな私に手柄なんて必要ないでしょ。ゼストに全部渡してしまった方が役に立つし、お金だってその方が嬉しいに決まっている。


とにかく私は行かない。